はじめに
「加盟店向けのクローズドサイトを作りたい」「会社単位で顧客管理したい」というご要望は、BtoB系のShopifyストアで非常に多く寄せられます。
これまでShopifyのB2B機能(Company / Catalog / Marketなど)はShopify Plus限定でしたが、2026年4月よりベーシックプラン以上で利用可能になりました。これにより、月額29ドル〜のプランでも本格的なB2Bサイトを構築できる時代が到来しました。
本記事では、実際の加盟店向けサイト構築を通じて得た知見を、設計思想・選定ポイント・運用フローの観点から整理してご紹介します。
B2B機能で何ができるようになったか
ベーシックプランでも使えるようになった機能
- Company(会社)アカウントの管理
- 会社単位での担当者紐付け(複数人OK)
- Catalog(カタログ)による商品出し分け
- Market(マーケット)との連携
- B2B専用のチェックアウト
- B2Bアクセスメールの自動送信
これらが追加費用なしで利用可能になったのは、BtoB案件を手掛ける制作者にとって大きなインパクトです。
従来との違い
従来:カスタムフォーム + 顧客タグ + Liquidで頑張って実装
→ 工数大・運用が複雑
現在:Shopify標準のB2B機能 + Shopify Forms + Shopify Flow
→ 工数最小・運用がシンプル
加盟店向けサイト構築の全体設計
採用した技術スタック
| カテゴリ | 機能 | 用途 |
|---|---|---|
| Shopify標準 | B2B機能 | Company(会社)管理 |
| Shopify標準 | カスタマーアカウント | ログイン認証 |
| アプリ | Shopify Forms | 申請フォーム |
| アプリ | Shopify Flow | 自動化処理 |
| テーマ | Liquidテンプレート | 表示制御 |
すべてShopify公式のものだけで完結できる構成です。
申請から商品閲覧までの設計
全体フロー
- 訪問者が申請フォームを送信
- 自動処理:顧客アカウント作成、会社(Company)作成、申請ステータスタグ付与、申請受付メール自動送信
- 管理者の確認・承認
- 承認の場合「権限を管理」で承認 → 自動でメール送信、タグ自動付け替え
- ユーザーがログイン
- 商品閲覧・購入が可能に
Shopify FormsとB2B機能の連携が秀逸
今回の構築で最も大きな発見だったのが、Shopify FormsとB2B機能の自動連携です。
Shopify Formsの「会社の設定」機能

Shopify Formsには「会社の設定」というオプションがあり、これを有効にすると、フォーム送信時に以下の処理がすべて自動で行われます。
- 顧客アカウント作成
- 会社(Company)作成
- 顧客と会社の紐付け
- 申請ステータス(未承認)の付与
これらが1回のフォーム送信で全自動で行われます。
一般顧客との分離

通常、申請者と一般顧客が同じ顧客リストに混ざってしまう問題がありますが、Companyが自動作成されることで、管理画面の「顧客管理 → 会社」メニューで申請者だけが「会社」として一覧表示されます。
一般顧客と完全に分離して管理できるため、運用上、非常に大きなメリットです。
承認フローの自動化(Shopify Flow)
「Company contact assigned permission」トリガーが鍵
Shopify FlowにはB2B関連の細やかなトリガーが用意されています。
- Company created:会社が作成された時
- Company location created:会社のロケーションが作成された時
- Company contact created:会社の担当者が作成された時
- Company contact assigned permission:会社の担当者に権限が付与された時 ← 重要
この「Company contact assigned permission」が、承認時のトリガーとして使えます。
承認時の理想フロー

管理者の操作は、会社の「権限を管理」で承認する1クリックのみ。すると以下の処理が自動で走ります。
- Shopify標準:B2Bアクセスメール送信
- Shopify標準:アカウント招待メール送信
- Flow:顧客タグの整理(申請中タグ削除など)
結果として、管理者の操作は1クリックのみで、顧客側は商品閲覧・購入が可能になります。「承認の1クリックで全自動」という理想的な運用が実現できます。
構築する自動化Flow
必要なFlow
-
申請受付メール
トリガー:Customer tag added
→ 申請完了の通知メールを自動配信 -
承認処理(タグ整理)
トリガー:Company contact assigned permission
→ 承認時の顧客タグを自動で付け替え -
ご登録見送りメール
トリガー:Customer tag added
→ お見送りの場合の連絡メール
複数ブランドや会員区分がある場合は、これをパターン分けして増やしていきます。
メール文面の表現について
却下メールは「ご登録見送り」という表現を採用しました。
NG例:
- 「申請却下のお知らせ」(直接的すぎる)
- 「不採用のご連絡」(採用試験のような印象)
採用:
- 「ご登録見送りのご連絡」(ビジネスシーンで一般的)
加盟店申請という文脈では、丁寧で婉曲な表現がふさわしいです。
閲覧制御を考える上での重要ポイント
プランによってアプローチが大きく変わる
「加盟店専用」「会員制」のクローズドサイト化を検討する場合、Shopifyのプランによって最適な実装方法が異なります。
Shopify Plusの場合
- 「ストアアクセス」設定でストア全体を承認済み顧客のみに制限可能
- checkout.liquidのカスタマイズも可能
- B2B機能をフル活用した堅牢な設計が可能
管理画面の設定だけで、ストア全体を非公開化できる強力な機能があります。
ベーシック〜上位プラン(Plus未満)の場合
- ストア全体のアクセス制限機能はなし → テーマカスタマイズで実装する必要あり
- checkout.liquidのカスタマイズ不可
- 閲覧制御はテーマ + 顧客タグでの実装になる
つまり、プランによって閲覧制御の実装方針が変わるという点を、制作前にクライアントに事前にお伝えする必要があります。
ベーシックプランで閲覧制御をする場合のアプローチ
ベーシックプランでクローズドサイトを実現する場合、以下のような実装方針になります。
-
テーマ層でのカスタマイズ
layout/theme.liquidに判定ロジックを追加し、テンプレート名と顧客タグで表示・非表示を制御。閲覧不可時はスニペットで案内画面を表示します。 -
B2B機能との併用
ログイン後はB2B機能で会社単位の管理。カート・チェックアウトはB2B用の動線を活用します。 -
制約の理解と合意
JSON API直アクセスは完全には防げない、SEO上はnoindex等で対応するなどの制約をクライアントと合意しておきます。
テーマカスタマイズを伴うため、Plus版より工数はかかりますが、実用上は十分な閲覧制御が実現可能です。
クライアントへの説明で重要なこと
プラン制約の正直な共有
クライアントに説明すべき内容は以下の通りです。
- プランによってできること・できないことがある
- ベーシックプランでもB2B機能の主要部分は使える
- ストア全体のクローズド化はPlus専用機能
- 完全な閲覧制限が必要な場合はプランアップを検討
- 通常の運用では、ベーシックプランの実装で実用上問題なし
クライアントがPlusにする予算がない場合でも、ベーシックプラン版の実装で何ができて何ができないかを明確に伝えることが信頼関係につながります。
小規模予算でも構築可能
月額29ドル〜のベーシックプランで、Shopify Forms(無料)+ Shopify Flow(無料)の組み合わせなら、追加コストゼロでBtoB加盟店サイトが構築可能です。
これは2026年4月以降のShopifyの大きな魅力ポイントです。
構築を通じて学んだこと
学び1:B2B機能を「使うかどうか」の判断基準
B2B機能を使うべきケース:
- 加盟店・会員制のクローズドサイト
- 会社単位での顧客管理が必要
- 担当者複数人を1社にまとめたい
- 承認制の登録フローを組みたい
使わなくてよいケース:
- 一般消費者向けのみのEC
- 個人会員のみのサイト
- 単純な会員価格設定だけが目的
学び2:Shopify Formsとの連携機能を活用する
「フォーム送信 → 顧客作成 + 会社作成 + 紐付け」が全自動になる機能は、知っているかどうかで実装工数が大きく変わります。
学び3:Shopify Flowのトリガー一覧を把握する
FlowにはB2B関連も含めて細やかなトリガーが用意されています。実装前にトリガー一覧を確認することで、「自動化できるか・手動運用になるか」の設計判断が変わります。
まとめ
構築のキーポイント
- Shopify Forms + B2B機能の自動連携を活用
- Shopify Flowで承認・メール配信を自動化
- Company(会社)単位で申請者を管理
- プランに応じた閲覧制御方針の選定
- 「承認の1クリックで全自動」を目指した設計
想定運用の効果
- 加盟店専用クローズドサイト化
- 申請から承認までの大部分が自動化
- 管理者の運用負担を最小化
- 一般顧客と完全分離した会社管理
さいごに
2026年4月のB2B機能のベーシックプラン開放により、ShopifyでのBtoBサイト構築の敷居が大きく下がりました。
「加盟店向けサイトを作りたいがPlusは予算的に難しい」という案件でも、ベーシックプランの範囲で実用的なB2Bサイトが構築できる時代になっています。
ただし、ストア全体のアクセス制限など一部の機能はPlus限定のため、プランに応じた実装方針の選定が制作者には求められます。
本記事が、同様の案件に取り組む方の参考になれば幸いです。
※ 本記事の内容は2026年5月時点のものです。Shopifyの機能・仕様は変更される可能性があります。